「人文書編集者ナイト」に行ってきました

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2017年6月23日(金)、神楽坂にある日本出版クラブ会館の一室で開催された「第3回 編集人@読書人 人文書編集者ナイト」に行ってきました。

どうやって著者を探しているの?

登壇者は新潮社、白水社、作品社で人文書を手掛ける編集者3名。普段私には縁のないお堅い分野ではありますが、未知の世界だからこそ「どうやって著者を探しているのか」「どのように企画を立てるのか」など、好奇心がそそられます。

家事や美容の実用書なら、ブログやインスタグラムで書き手を探すこともできますし、小説やマンガも、投稿サイトがたくさんあります。でも、学問の裏打ちがあり、しかも売れる本が書ける人の数は限られているはず。

編集者自身が人文科学の研究に打ち込んだ過去があれば、学問を通してネットワークが形成されていることもあるし、面識がない人でも興味があれば、積極的にアプローチして直接会いに行くなど、著者開拓には、とにかく人と人とのつながりがモノを言う面がある様子。

人脈がモノを言う、直接会って口説き落とすことが効くのは、人文書に限った話ではないでしょうが、書くのに骨が折れる分野ではあるし、時にはひとつの企画が本になるまで何年もかかるので、著者と編集者の関係は、実用書のそれより密な印象を受けました。

怖いけれど、真実を知りたい読者

ところで人文書の読者とは、どのような人たちなのでしょうか。残念ながら、周囲には見当たらないのでピンとこないのですが、時々、この分野に接点のない人をも巻き込むベストセラーが生まれます。最近では、トマ・ピケティの『21世紀の資本』とか、ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』とか。

ざっくり言えば、ゴーギャンの名画のタイトルである「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」という生命の根源的な問いを胸に抱いたとき、人は人文書を手に取るのでしょう。たとえば、政治や経済に不安を覚えたり、病気や左遷で挫折を経験したり、あるいは年をとり、死が身近に感じられるようになったとき。

人類の歴史を紐解き、世界の行く末を知りたいと願う気持ち。その欲望は死への恐怖と直結しているのですが、人文書のベストセラーには、そんな深淵をのぞく「怖いもの見たさ」の気配を感じます。しかしそこには、「真実を知り、正しい方向へ進めば、まだやり直せるかもしれない」という希望も込められているのでしょう。ちょうどパンドラの箱のように。

単価が高い本が売れると儲かる!

売れ行き以外の指標としては、新聞の書評欄に掲載されること、サントリー学芸賞など由緒ある賞での受賞があるようです。『21世紀の資本』は5940円、『サピエンス全史』は上下で4104円と、ジャケ買い、即買いできる値段じゃない! だから、識者のお墨付きがあって、初めて購入する決心がつく人も多いのでしょう。

ついでに現金なことを言うなら、単価が高い本が売れると、儲かる! 同じ10万部でも、800円の本と5000円の本では、ずいぶん利益に差があります。この売れる、売れないの振り幅の大きさも、人文書を編集・販売する醍醐味ではないでしょうか。

【おまけ】会場最寄り駅・神楽坂のランタンバーガー

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