横浜市営地下鉄・弘明寺駅近くにある絵本店、クーベルチップで開催されたイベント「絵本は世界への扉」に行ってきました。
ゲストは、光村教育図書(教科書でおなじみの光村図書出版とは別会社)で絵本を手掛ける編集者。参加者は全員女性で、学校で読み聞かせをしている人などが中心のようでした。平日の昼間だというのに、店内はぎゅうぎゅう詰め。絵本を愛する女性は多いのか、それとも熱心なマニアが多いのか?
世界の文化や自分とは違う生き方を知る
光村教育図書では、世界各国の絵本を日本で出版しています。たとえば、ラマダンの終わりを祝うムスリムのお祭り、イードの様子をユーモラスに著した『イードのおくりもの』や、メキシコのクリスマスのお話『ポインセチアはまほうの花』では、日本にいながら遠い国の文化や風習を知ることができます。
伝記にも力を入れているようで、『ひらめきの建築家ガウディ』など有名人のものから、豆を窓に飛ばし、その音で朝早く人を起こす仕事をしていた女性『メアリー・スミス』のような、一風変わったものもあります。マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの演説を絵本におこした『わたしには夢がある』や、聴覚障がいを持つ野球選手の話『耳の聞こえないメジャーリーガー ウィリアム・ホイ』など、メッセージ色の強い絵本も目立ちます。
大人になってはじめて、絵本の魅力に気づく
私は幼い頃から文章を読むのが好きだったので、文字の少ない絵本に興味を持たずに大人になりました。しかし子どもが、ミッフィー(うさこちゃん)の熱烈なファンとなり、時には「もう勘弁してよ…」と思いながらも、繰り返し繰り返し読み聞かせをする羽目となりました。
そんなある日、おそらく何百回も読んだであろう『うさこちゃんと うみ』を読み聞かせている最中、突然絵本の中の海が、波の音や砂の感触とともに、まるでそこに自分がいるかのような臨場感をもって、リアルに迫ってきたのです。
「さきゅうって おおきいのねえ」「ああ おおきいんだよ うさこちゃん。そら むこうを ごらん。かいがんだ。」。
たったこれだけのセリフとシンプルな絵で、私と子どもと絵本の世界がすべて溶け合ってしまったあの快感は、いまも忘れることができません。
子どもの頃に、一生の友となる絵本に出会う喜び。そして、親子いっしょにその世界に入ってしまう愉楽。自分が子どもの頃には知らなかった幸福を、大人になってから発見することができたのは、我が子とミッフィーのおかげです。
コドモには味わえない絵本の愉楽
子どもの時に、すぐれた絵本に出会うのも幸せですが、大人になってから、大人にしか楽しめない絵本に出会うのも、また幸せ。エロティックな作品を堂々と広げたり、理不尽や不合理を苦い思いとともに噛みしめて飲み込むのは、年を重ねたからこそ味わえる読書体験ですから。