埼玉県川口市、JR蕨駅近くにオープンしたブックカフェ、しばしば舎で開催されたイベント、「小出版社が世界を変える」に行ってきました。
イベント登壇者は、トランスビュー、共和国、ブルーシープの編集者。このうちトランスビューは、他出版社の決済や納品を代行する業務も行っています。しばしば舎は、トランスビュー扱いの書籍を全冊揃えたブックカフェで、アンテナショップの役割を果たしています。
売りたい本が売れない理由
一般的に本は、出版社からトーハンや日販など「取次」と呼ばれる会社を通って書店に並ぶのですが、その方法だと、書店にとっては悩ましいこともあります。たとえば、「地味な本だけど、ウチでは結構売れそうだから多めに取り寄せたい」と思っても、どんな本を何冊書店に配本するのか決めるのは取次なので、希望がかなわないことがあります。
大手取次を通すと、小さな出版社の少部数の本は、小さな書店、特に地方の書店にはまず入荷されません。店頭になければ書店に頼んで取り寄せることもできますが、「新聞広告で見た」「テレビで紹介していた」など、その本のタイトルや内容をどこかで知ることがないと、それもできません。
ある地方在住の健康本の著者は、知り合いのお年寄りに「Amazonって、川?」と実際に言われたことがあるそうですが、これだけネットが発達した現在でも、高齢者など、ネットでの買い物にはまだまだ抵抗がある人がいます。パソコンやスマホの契約自体も複雑で難しいし、買っても使い方がよくわからないしで、PCデポが人気なのも、よくわかります。
愛すべき希少種に憧れる気持ち
会場にはサブカルっぽい出版関係者もいれば、店の近所に住むおじさんもいて、おしゃれとローカルが同居している感じ。人間らしい暮らしを求めて地方に移住した若者と、もともとその地域に住むおじさん、おばさんとの出会い…そんな光景を連想しました。
出版不況といわれながらも、小出版社や小さな書店が次々と立ち上がっているのは、既存の出版社や書店に物足りなさを感じている人が、少なくないからでしょう。都心から少し離れたブックカフェに、わざわざ遠くから足を運ぶ人の気持ちは、レッドデータブックに記載された愛すべき希少な生き物を守りたい、という気持ちに似ているような気もします。
とはいえ、私自身は大型書店にドン!と平積みされる俗っぽい本が大好き! 忙しい毎日を少しでもラクにするため、作りおきレシピの本を買って、ついでにそのレシピでやせようと目論んだり、「ベターっと開脚できたからって、何なの?」と思いながら、なぜか無視できなかったり。
そんなおばちゃんマインドの持ち主ではあるのですが、手の届かない場所でひっそりと生きる希少種に憧れる気持ちも、同時にあるのです。
好きな場所を行き来して、好きな本に出合う
「何でもそろう」と思ってやってきた大型店で、よくあるものしか見つからないという経験は、デパートでもドラッグストアでもあるのですが、本の世界でも、売れ筋の商品を効率よく流通させるシステムに退屈している人は、結構いるのでしょう。どこに行っても同じ商品があるのは、ある意味安心できることではありますが、それじゃつまんないと思う気持ちも、同時に持ち合わせてしまうのが、人間のやっかいなところ。
華やかなベストセラーも、静かに光を放つ本も、どちらも捨てがたい私は、これからも本の魅力に吸い寄せられて、大型書店と小さな本屋をフラフラと行き来することでしょう。
おまけ
この日、近くで猫と遭遇!