先日、ある人から相談されました。出版社から「本を出さないか?」と誘われているが、自分が書きたいテーマとは違う企画を提案されている。それでも、本を出した方がいいのだろうかと。
本を出したい人・2つのタイプ
本を出したい人は、おおざっぱに分けると2つです。ひとつは「仕事の役に立つ」から出版したい人。たとえば、弁護士や税理士が「お得な相続」というテーマで本を出せば、「あの先生は相続にくわしい」と認められ、相続案件の依頼が増えるでしょう。「有名になりたい」「肩書きにハクをつけたい」という人も同じタイプです。
もうひとつは、まだ知られていないことを世に広めたい人。たとえば、長年腰痛に苦しんできた人が、あるトレーニングで治ったとしたら、同じ悩みを持つ人たちに、その方法を教えたいと思うでしょう。
「めちゃくちゃおいしい料理なのに、日本では知られていない」「こんなにすごい人がいることを、多くの人に知ってもらいたい」など、何かを、誰かを紹介したいという気持ちが根底にあるタイプがそう。「誤解を解きたい」「本来の意味を知ってほしい」という人も、こちらです。
私に出版の相談をした人は、「○○を広めたい」という明確なビジョンを持っていました。しかし、その人の仕事や経歴を知る編集者は、別の企画を提案したのです。ビジョンとまるっきりズレた企画ではないけれど、思っていたのとはちょっと違う。だから悩んでしまったのです。
思っていたのとは違う方向からブレイクした人は多い
芸能界でも、本当は歌唱力を評価してほしいのに、可愛いからアイドルとしてデビューさせられたり、漫才がやりたいのに、グルメレポーターの仕事ばかり来るなど、思っていたのとは違う方向に進んでしまう人は多いようです。
それがいいのか悪いのかは一概には言えませんが、「アイドルなんて嫌!」とゴネてたらデビューできなかったかもしれないし、グルメの仕事を断ればテレビに出るチャンスを失い、いつのまにか忘れられてしまったかもしれません。
アイドルでも歌を歌っていれば、やがてミュージカルに抜擢されて歌唱力を生かせるかもしれないし、芸人もグルメレポーターを続けつつ、地道に舞台でコントを披露していれば、お笑いファンの口コミで火が付き、やりたかった仕事に戻れるかもしれません。
著者になれば、次の企画を提案できる
出版の場合も、「チャンスがあるなら、デビューしてみたら?」と私は思います。一度本を出せば、世間から「著者」として認識されます。すると「こういうテーマでも書いてみませんか?」という依頼が来るかもしれないし、自分から「次はこんなテーマで書いてみたいのですが」と編集者に相談することもできます。
まずは「著者」のステージに立つことで、次の道が開ける可能性がグンと高まります。一足飛びに希望は叶わなくても、出版ではずみをつければ、本来やりたかった企画を通す力が手に入るかもしれませんよ。
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